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深淵のdetective・16

「ケイスケ、食欲が無いの?」

「ニャー…」

日本の西園寺の事務所では留守を預かる秘書の小百合が猫の世話をしていた

「淋しいのは解るけど、ちゃんと食べないとね?」

「ニャー?」

ケイスケは何で探偵と恋人は我輩を置いて行ったの?と訊いているようだ

「仕方無いのよ。貴方を連れて行くと、税関の検疫が有るから、結局離れ離れにされちゃうのよ」

最低でも2週間それを出国と入国で

「社長と先生が、1週間で帰れたとしたら、貴方、無駄に検疫で足止めされるだけなのよ?」

だからね社長達の帰りを待っていましょうね?

「ニャーァ〜」

《イヤなのニャ〜!》

だって目の前に居るのは厚化粧のオッサン

我輩はプニカワの子供が大好きなのニャ〜

むさいのニャ〜潤いが足りないのニャ〜!

「ンニャーン!」

*****

「シノブくんのお兄さん、何処に居るんだろうね?」

西園寺とアラタは一旦ホテルに落ち着き依頼人とその家族に話をしてきた

…と言っても報告するような事は何も無かったのだが

「何処に居るにしろ、赤ん坊が一緒なら、必需品が山程ある。町からそうそう離れてはいない筈だ」

「赤ちゃん…、男の子だって。太一郎ちゃんって、名前だって」

まだ生後3ヶ月

「『太郎』と『一郎』両方とは、随分と欲張った名前だな?」

どちらも『長男』『大きい』『一番』と言う意味だ

「奥さんが、気に入って付けたんだって」

もしかしたら自分の唯一の子供になると感じていたのかも知れない

*****

シノブの兄ワタルの事件は深夜に起きた

その前日当直医だったワタルは朝に帰宅し出勤する妻と子供の世話を交代する筈だった

ところが時間になっても戻らず携帯も通じない

病院に確認してみるとワタルは昨日無断欠勤していたと言う

責任感の強い夫がそんな事をする筈がない

妻は直ぐに捜索願いを出した

その夜に隣人が帰宅するとワタルの車が私道に停まっていた

帰って居るのだと思いそのまま自宅に入ったが何か言い争うような声が聞こえ窓の外を見てみるとワタルの車が急発進して行った

何事かと隣を訪ねて妻の遺体を発見したのだ

*****

渡米の翌日

西園寺とアラタはターナー弁護士と共にリミット巡査に逢った

「ワタルさんの姿は、見ていないんだろう?」

だったら犯人は前日出勤途中のワタルを襲い奪った車で彼の自宅に行き奥さんを殺害したと考えられる

「それは、不自然だ」

強盗が被害者の自宅を知っているなど…

「知っていたんじゃないか?」

「はあ!?」

「犯人は初めから、ワタルさんがどういう人物か、知っていて襲った」

目的は強盗ではなく何か別の物だったとは考えられないか?

「別の…って?」

「ワタルさんが、持っていた何か…と思ったが、自宅は荒らされて無かったそうなので、物ではない」

では赤ん坊?

「しかし、ワタルさんは当直で留守にする予定だった。そのワタルさんを襲い、丸一日経ってから、自宅を襲うのは、無理がある」

だったら犯人の目的は?

ワタルさんと赤ん坊二人を誘拐したその理由は?

つづく