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【偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015)77

「…でも、打たせるならライトに打たせれば自分がひとつアウトを取るつもりでしたから。あの状況で同点なら御の字ですし」

「高野キャプテンが一言、“他人の指示でマウンドから下ろされて悔しく無いか?悔しいならマウンドを安易に譲るな。打者や自分から逃げるな。次は左打者だからライトに打たせれば俺が絶対アウトにするから”と言ってくれて。それで…」

「俺が、いや高野の指示で内角寄りを攻めたら案の定、ライトに飛んで…。まぁ予想外に伸びましたけど」

ふっくら君が言う。

「伸びすぎだよ。流石に焦ったぞ。あれは」

高野幸一はバッテリーに笑う。

「高野なら大丈夫だと信じていたよ」

「調子いい奴だな。セカンドの園田の肩が強くて助かったよ」

「コントロールはイマイチだけど肩だけは強いからな。園田は」

「おーい。聞こえてるぞ、大河内」

二塁手が不満そうに叫ぶ。

「さあ、引き離そうか」

「ハイッ」

監督の声に呼応して先頭打者が打席に向かう中、ナインばベンチから声を上げる。

スタンドの声援に負けないくらいに。

「ベンチの選手に声援で負ける訳にはいかないぞー。声出して行こう」

応援団長が声を上げると、ブラスバンドが応える様に音を上げ、応援団とチア部員のリードで生徒の応援歌が響く。

再び風を呼び寄せた高野幸一率いるナインが北高投手を攻め立てる。

9回に入り、1点を挟んだ攻防が熱を帯びた。

結局、四球などでランナーを出すも、要所を北高バッテリーに締められ、追加点を奪えないまま、チームは9回裏の守備に向かう。

投手は二年生控え投手の三妻のまま、高野幸一は右翼守備につく。

三妻とふっくら君のバッテリーに「全部ライトに打たせろ」と檄を飛ばして。

それに応える様に他の野手達も「俺に」「俺に」と三妻に迫る。

ナインは笑い顔さえ浮かべてベンチからグラウンドに駆けて行く。

「守るんじゃなくて攻めて行くぞ!」

木島某(なにがし)がナインに向かって声を掛ける。

「結局9回表も追い込みながら無得点?」

チア部副部長霧ヶ峰佐緒里が溜め息をつく。

「バカね。1点差を守り抜けば勝ちなのよ。リードしているのはこっちなんだから」

慰める様に部長の砂原靖巴が笑う。

このまま勝利で終われば、スタンドの応援班は、守備に就いたナインを拍手で出迎えれば良い。

偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015)76

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